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Neptun/ネプチューン

BGG

https://boardgamegeek.com/boardgame/164237/neptun

 

 自粛とか色々あって、再開一発目は軽いリハビリということでこれから。

 例の10万円の給付があったので、いくらかはこの業界に還元せねばということで、イエローサブマリンで特価になっていたボードゲームを爆買いしたもののうちの1つ。しかし、このNeptunくらいなら、特価になってもまぁいたしかたないかな、とは思うものの、Forum TrajanumとかSymphonyとかまで結構な値引きになっていたのは・・・、これも時代というものかのぅ。「気にはなっていた」ゲームたちだったのでありがたく買わせてもらったけど、世が世なら後で中古を長年に渡って探したり、プレ値にならないか怯えたり、海外の通販を探してまわるクラスのゲームなのではと思う。ボードゲームが世の中に広がっていっているのを実感しつつ、これらを特価で売らねばならないことはちょっと心配だったりする。お世話になっているTrickplayさんとかサイコロ堂さんとか、ニッチなゲームを和訳付きで入れてくれているところはこの先大丈夫なのだろうかとか、単なる杞憂で終わることを願っている。

 

 さてNeptunである。正直まったく気にもなっていなかったゲームだし、このブログに書くほど何か感銘を受けたわけでもないゲームなのだが、ちょっと備忘録的に書いておこうと思った次第である。

 ・特価、・5人プレイ可能、・デザイナーがちょっと知られている、・今までに買ったQueenのゲームに外れ無し、ということで、積極的に欲しいわけでもないけど、安くなってたら買わない理由もない、ということで購入。

 期待がそれほど高くなかったこともあるが、普通に面白かった。プレイ時間45分と書いてあってちゃんと90分で終わるし、カードの取り合いとトラック進行レースという2種類のインタラクション、配達ルートを考えるソロっぽいパズル要素、そして地中海の風の強さに一喜一憂する適度な運要素と、ゲーム全体が手堅く面白い。ルールが簡単で1時間くらいを埋める5人ゲームとして定番になるポテンシャルはある。後述の備忘録もあって、絶対にあと1回はやってみたいゲームだ。この5人の場合のとりあえず1時間ゲーを出す時には、今までEthnosが度々担ってきたけど、これは取って代わると思う。

 

 備忘録として残しておこうと思った理由は、「説明書に記載のない勝利点トークン」があったから。

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一切の言及のないトークンたち

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 説明書のセットアップの写真にはセットされているが、本当に一切の言及がない。BGGのルールFAQにもなかったが、同じくBGGでゲーム概要を紹介している人が、ルール紹介の中で普通に使い方を説明していた。「そのターンの終わりにもっともお金を持っているプレイヤーに付与される得点」ということだ。たぶんKickstaterのストレッチゴールだったので大抵の人は使い方を知っていたが、古いルールブックをそのまま印刷してしまったか何かなのだろう。ただ、あくまで概要の説明だったので、お金の量が同点だった場合の説明がみつからない。とりあえず我が家では「同点の場合は手番順で決定」とすることにしよう。そんなわけで一部ルールを抜かしてプレイしてしまったこともあって再戦を期している所もあるが、″面白いゲームはルールを間違えてプレイしても面白い”理論もあるし、普通に良いゲームだと思う。

 しかしBGGでレーティングつけている人数も少なかったし、このクラスのゲームがこうも簡単に時代に埋もれてしまうとは、これが時の流れなのかと感慨深かくなるゲームでもある。

Time of Soccer/タイムオブサッカー ファーストインプレッション

3/10

数寄ゲームズさんから直接指摘がありまして、自分がルールを理解していなかった部分を修正しました。

 

 ようやく我が家でもキックオフを迎えることができる2020-21シーズン。オレンジのシャツを着て新潟の柿の種を主食とする勇者が参加でき、尚且つプレイ人数マックスの/4人会を待ってようやく開幕したのであった。

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Time of Soccer

 ゲームとしては堂々120分を唄う重ゲーなので、まず1戦目は4週目(=5ラウンド目)で順当に協議終了。ある程度の見通しを掴んだところで2戦目に突入するよくある流れ。我がアトレ・・・じゃなくて赤と白の縦ストライプをエンブレムにあしらう我が地元チーム「Mojea」は、1回目と打って変わって苦しい経営を強いられる。プレシーズン中にTV契約も広告契約も取れず、その代わり選手契約数で先行するも、序盤の試合でダイスが振るわず勝てない⇒ファンが増えない⇒収益が悪化⇒選手も契約できないという負のスパイラルであっという間に他の3チームの経営に置いて行かれてしまう。リーグの順位もぶっちぎりの最下位で(一応NPCチームよりかは僅かに上といった順位)、しょうがないので起死回生を期して、シーズン中にも関わらず集金目的のフレンドリーマッチを強行開催する。疲労度が溜まるので週末のリーグ戦を手を抜いて戦わざるをえないのだが、ダイスの妙でここで後輩Mの指揮するソシ・・・じゃなくて緑と白のエンブレムの「Legartos」相手にドローをもぎ取り、カップ戦狙い戦略に一縷の望みをかけることができるだけの経営状態に回復した。

 自分以外の3人は、水曜日のカップ戦は手を抜いて、直接勝ち点を稼げるリーグ戦に注力する。華麗なアタッキングフットボールを極める後輩MのLegartos。ゲーム中の攻撃レベルは実に11にも達し、特に右サイドを中心とした攻撃で観客を魅了する。しかし攻撃は水物で、10戦以上も戦えば1~2試合はゴールを奪えない時もあり、試合内容を正しく反映した勝ち点までは稼げず2位に終わる。勇者率いるレア・・・じゃなくて白地に優勝回数を誇る星をエムブレムにあしらった「Mollerusa」は、まだチームが整のっていない序盤戦を運よく勝ち切り怒涛の開幕6連勝。ただし我がMojea同様広告契約を上手くつかめず経営状態は途中から火の車。後半戦は2チームに追い上げられるも、序盤のリードを活かして何とかリーグ戦を制したのであった!しかし、ゲームの勝ち点ではなんと最下位!経営悪化で選手を売りまくったあげく、まとまな代わりの選手を補強できないフロントに愛想をつかしたファンからの評価点がもっとも低く、チームの完成度も低くてそこの評価も得られず、リーグ優勝してまさかの最下位という凄いんだか空しいんだかの結果となった。

 (ゲームとして)勝ったのはK官さんのヴィジャ・・・じゃなくて黄色を基調としたエンブレムの「Palmeras」。マルコム・グレイザーも真っ青の徹底した拝金主義を掲げ、我が「Mojea」が断腸の思いで開催したシーズン中フレンドリーマッチを開催しまくる。オーナーの金稼ぎにチームのエネルギーが費やせられ、当然チームはリーグ戦では100%の実力を出し切れない。ゲーム途中までは週末の試合で手を抜くも、ダイスに助けられてかろうじて順位を維持する展開が続く。Palmeras地元サポーターはこの不甲斐ない試合内容に激怒してオーナー自宅を襲撃する事件を起こしても良さそうなものだったが、序盤に優秀なコミュニティマネージャーを雇ったのが功を奏し、負けても引き分けても上手く地元ファンを誘導して、逆にファンの満足度は高まり続けてファン数は増加。さらにフレンドリーマッチで海外ファンも開拓し、(ゲーム上の)ファン数はカンスト。増えた入場料収入でさらに稼ぎ、そのお金で優秀な選手とコーチをかき集め、リーグ戦でも2位に食い込み、見事ゲームでも勝利した。

 我がMojeaはカップ戦を制せなかったのが響いて3位。他の3人がカップ戦を捨てたのが逆に厳しく、週末のリーグ戦があるからと言って手を抜くことのないNPCチームとの戦いを余儀なくされ、名もないアマチュアチームに決勝で敗れてしまった。

 

こちらは無かったことになった1回目のゲームでのMojea

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序盤早々に広告も契約出来て、優秀な代理人も確保できて選手の数も順当だったんだけどなぁ。

 

 まあゲームについて言いたいことは色々ある。まずもっともネガティブなことは、情報量が多すぎる・・・ことはまあ言うまい。こちらもそれを覚悟して、いやある意味望んでこういうゲームをしているのだ。やはりルールライティング部分だろう。ルールとして必要な情報と、フレーバーとして必要な情報の切り分けができてないばかりか、プレイの例示もフォントや背景色を変えずに始まるので、非常に読みにくい(プレイ例は英語ルールブックでは背景色が付けられていたので、ここは数寄ゲームズさんにもうちょっと頑張って欲しかった)。″これはどういうルールだっけ?”とルールブックを確認するたびに困った。例えば、サイドバックしかできない選手が持つ、ウィングとしての数値に何の意味があるのかとルールブックを何度も読み直してしまった(戦術変更で攻撃参加する際にはサイドバックではくウィングの数値を適用する、というルールだったのだが、結局この日は間違ったルールでプレイしてしまった)。あとは▲とか◆の記号しか印刷されていない連携/戦術用マークも、ルール説明文中に堂々と◆はPass、●はCross、という表が紛れ込んでいて、ルールの読解を困難にしている。パスやクロスがフレーバーで、ゲーム中は記号だけ見ていればよい、というのは結局ゲームが終わってからやっと理解できた。いっそ「サリーダ・ラボルピアーナ」とか「5レーン攻撃」とかもっと専門的な名前を付けておいて、事細かに戦術上の意味を唐突に語りだしてくれれば、″ああ、これはフレーバーだな”と察知できようものを・・・(もちろん欄外に枠を設けてくれるのが一番良いです)。あとはマーケットデイのロンデルがなぁ・・・。ここはもう少しスマートで時間のかからないシステムがあったのではないかと思う。特に経営を上手く表現できているとも思えないし。

 ただ、サッカーのボードゲームとしては間違いなく面白い。試合そのもではなく、チーム作りに焦点を当てたのが上手いし好みだ。組織作りというサッカーを越えた普遍的なテーマのおかげで、サッカーに興味のない人でも楽しめる造りになっている(120分ゲームを楽しめるかはまた別だが、我が家ではその点の心配は幸いにして無いのがありがたい)。ダイスのたった2回振り勝負といえども試合自体も良く表現されていると思う。いくら攻撃力がすごくても時には無得点で終わることがあったり、実力差の激しいチーム同士の試合でも、何となく2-1の決着に落ち着いたりする。いかにも現実のサッカーでありそうな展開だ。試合の無い場面でチーム構築に奔走し、少しでも良い選手、少しでも良いスタッフ、少しでも良い広告契約を求めてさんざん労力を使った後は、実際の試合ではサイコロを2回振るだけというのも、経営や監督視点では確かにそうだろうなぁ、とも思わせられる。

 日本代理店の数寄ゲームズさんによると、スペインの同人上がりのゲームということだ。確かに様々な面で同人らしい粗削りな部分がある反面、サッカーそのものの多くの面を愛していないと作れないゲームだろうと思わせられる。各ポジションの選手を選り好んでチームを作り上げるという表現ではなく、まともな選手の頭数を揃えるのにも四苦八苦というゲーム上の表現は、これぞアメリカンスポーツではない、格差・差別が当たり前のヨーロッパサッカーそのものの世界だ。サッカーを知らなくてもボードゲームとして面白く、サッカーを知っていれば「なるほどね」と頷ける、傑作とはいかないまでも、怪作と言っていいボードゲームだろう。

エアライン・ヨーロッパ/Airlines Europeとロイヤルズ/Royals

5人会。

5人でプレイ可能な積みゲーがなくなってしまったので、昔一度しか遊んでいなかったゲームを引っぱり出して来てのプレイ。まずは『エアライン・ヨーロッパ』から。

確か日本語版が出てすぐに購入した記憶があるので、HJの記載通りなら8~9年前に買ったはずのゲームだ。当時はボードゲームのジャンルはおろか、自分自身の好みも理解していなかった頃なので、購入動機は不明。今見ると20年前、いや30年前と言われても通りそうな箱絵だ。

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この頃から見ると、現在の中心的なボードゲームのデザイン達も、たった8~9年でかなり洗練されたものに進化したことが実感できる。さすがに令和2年の今にこのデザインセンスは通るまい。以上のことから、巨匠アラン・ムーンのネームヴァリューに惹かれて購入したのではないかと推測される。

ゲームはユニオン・パシフィック/Union Pacificのリメイクだそうで、確かにルールがゲーム全体を通してすっきりと纏まっているし、得点計算表の配置や株式カードのデザインなど、必要な情報が必要な時に目に入るように配置されていて、非常にプレイしやすい。航空会社の株を売買しながら、各会社の価値を高めるという、この手のゲームにしては理解しやすいルールで、実際ルールブックも7ページだけだ。ただ、人を選ぶだろうな、というのは感じるゲームだ。「プレイしやすい」「ルールがまとまっていて理解しやすい」というルールデザイン部分は良いのだが、株の売買や航空会社の路線の開拓争いという背景世界があまり浮き上がってこない。ただ、ルール部分は秀逸なので、″我こそはピュアユーロの申し子なり”という自負のある方にはお勧めできるゲームだ。

反面世界観が曖昧だ。航空会社の路線開拓と株式カード入手のアクションが同一なので、そもそも自分が航空会社の中の人なのか、外から航空会社に投資する投資家なのかも、ルールでは表現できていない。路線開拓も「どこに伸ばすか」よりも「手近のコストが手頃なものを選択すれば大差ない」となっていて航空会社の気分も高まらないし、株式カードの入手も狙った株式を手に入れられないことも多いので、投資家気分も盛り上がらない。個人的にはもう一度リメイクする価値のあるゲームに感じるのだが・・・。

 

続いて『ロイヤルズ』。これもHJが日本語版?和訳付きドイツ語版?を出していたみたいなのだが、我が家のは第2版English Edition。各貴族の絵柄が洗練され、得点チップが若干厚くなったりしているようだ。

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Royals/ロイヤルズ

巷でいわれている通り、チケット・トゥ・ライドでやる中世のエリアマジョリティ。ボードゲームとしてあまりにも有名なチケット・トゥ・ライドだが、嗜みととして10周年記念盤なども購入して一度プレイしているが、この『ロイヤルズ』の方が断然好みだ。まず世界観が良い。「鉄道を引く」ことよりも「貴族に取り入って影響力を高める」方が断然熱いし(個人の感想です)、「近現代」よりも「中世ヨーロッパ」の方が断然胸躍る世界だし(個人の感想です)、陰湿に線路の行く先を塞いで邪魔するよりも、策謀カードで直接「ドスッ」っと都市からはじき出す方が断然爽快だ(個人の感想です)。

ルールデザインも良くできていて、最初は空いている都市の貴族の影響力+得点を取りに行き、ある程度取り合ったところで自然と国家エリアの影響力+得点に目が向き、最後は策謀カードで都市の奪い合いをする、と自然にゲームの様相が移り変わっていくようにデザインされている。といっても手成りで進める以外にも、今回K官さんが取ったような国王一点狙いという尖った戦略も取れるし(そして勝った)、それがアリなら女王狙いの方がより効率が良さそう・・・と戦略の幅も十分あると思う。チケット・トゥ・ライドは有名だけど自分はあんまり・・・という方は、こちらの『ロイヤルズ』を一度プレイしてみることをお勧めする。

電力会社拡張:株式上場

 ご存じフリーゼの代表作『電力会社』の拡張をようやくプレイできた。この拡張を購入したのは何年前だったか・・・、リサイクルCUBEさんがまだあの薄暗いマンションの一室で営業していた時に購入したものだ。一緒にレースフォーザギャラクシーの拡張とエンデバーを購入したのも覚えている。その後リサイクルCUBEさんの閉店という衝撃もあったが、ボードゲームカフェの一角で復活したようなのでまた機会があったらお邪魔したいと思っている。でも、あの狭い部屋の天井に届く棚にぎっしりと積まれたボードゲームの塔がいくつもあるあの空間、いつかまた行きたいと思っていたあの空間は、本当に居るだけで楽しかった。

 

 さて、この拡張は世間でもさんざん言われていることかもしれないが、インペリアルを想起させられる。電力会社をプレイするのがプレイヤーから会社に替わって、プレイヤーはその会社の株を売り買いするのだ。たしかに「電力会社だ」と感じさせつつ、基本ゲームとはガラッと変わったプレイ感で、ここまで発展/変更させた拡張は初めての体験だった。

 電力会社の基本ゲームは一時期我が家では良くプレイされた。Amazon.comにもAmazon.deにも、もちろんKickstarterにも手を出していなかった頃、つまり積みゲーの消化とか考えずに済んでいた頃に何回もプレイした。6人プレイ可能というのが重宝したし、ゲームのシステムが強力に脱落者を引き上げるので、初心者と経験者混ざってのプレイにも重宝したからだ。我が家では初心者と経験者の差を(あまりプレイヤーに感じさせることなく)埋めるのはゲームシステムの大きな長所で、それの無いゲームは例え面白くても半ば封印されてしまう。シヴィライゼーションとかツォルキンとかまたやりたいゲームはあれど、なかなかプレイする機会は回ってこなくなってしまうのだ。経験者と初心者混ざった状態でそれらをプレイするくらいなら、誰もが初見の積みゲーをプレイしたほうが良い。

 そんなわけで、電力会社の基本ルールはおろか、発電所の強弱や競りの相場観、アメリカマップの陣取りの具合など、誰もがそれなりに習熟した状況だったので、ルールの複雑さに溺れることなく拡張の面白さを堪能できたと思う。もちろんインストも簡単に済ませることができた。逆に言うと、全員が3回は基本ゲームを遊んだ後でないとお勧めできない拡張だな、と思った。電力会社は追加マップや発電所などもあるので、基本ルールの次に買う拡張をわざわざこれにすることもあるまい、と思う。

 

 実際のプレイでは6人それぞれが初っ端からそれぞれ別の会社を担当しだしたが、正直これはいかにもこの拡張初心者なプレイだったな、と1回やって気が付いた。1人よりも2人、2人よりも3人で同じ一社に肩入れしたほうが当然強力な会社になり、配当金も多くなるので、6人プレイだったら序盤は3対3で2社だけ立ち上げるのが王道だったようだ。実際途中からブルー会社に3人が相乗りした状況になり、ゲーム結果はその3人が上位3人になった。また、初期株価の高い会社の株を少数買うよりも、安い会社の株を沢山買うプレイングの方が明らかに良い。売り買いする手札が多ければ多いほど、(うまく立ち回れば)相場の変動からより多く利益を得られる。

 なので、最初はブルー会社とブラック会社を3人ずつで立ち上げ、それぞれ邪魔をするためだったり、株の売買の立ち回り具合で別の会社も立ち上げていく、といったプレイを定石で知っておく必要があった。何故なら、上位3人と下位3人はほぼダブルスコアの差が付いてしまったからだ。そう、もう1つ基本ゲームからの大きな変更点として、脱落者を引き上げる例のシステムがこの拡張ではまったく機能しないのだ。引き上げられるのは脱落した会社であって脱落したプレイヤーではない。そういった意味でも、やはり余程基本ゲームをやり込んだプレイヤー達のための拡張だった。もしも電力会社は結構やったけどさすがに少し飽きたなー、というグループがあれば、この拡張は是非にとお勧めできる。

2019年 来年もまたやりたいボードゲームTOP5

この時期にこういうことを書けばアクセスが伸びると聞いたので、滑り込みで世の中の時流に乗ってみる。

ただし、今年初めて遊んだゲームが対象なので、発売自体は去年だったゲームがあるかもしれない。

 

第5位 smartphone Inc./スマートフォン株式会社

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スマフォにおける他社との技術開発競争、販売シェアの奪い合いを追体験している、という気にさせてくれるゲーム。独特なアクションプロットも魅力的で、スマフォというテーマとも上手くマッチしている。ラウンド初めのアクションプロットさえ実行すれば、後はほぼ自動で処理していくのでプレイ時間が(この手のゲームにしては)短いのも良いし、5人プレイ可能なのも(我が家では)評価ポイントだ。唯一の懸念は、テーマの再現性も担っているゲーム中の技術名が、年を追うごとに古臭く感じ始める日が来るのではないかということだ。ポケベルが鳴らなくても歌そのものの魅力を味わえるように、ゲームそのものは色褪せない面白さなのは確かなのだけれど。

 

 

第4位 Rune Stones

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システム的な工夫に感じ入った名作。ゲームにおいてカードを使うということを良く理解して良く研究して良く構築してあると感じる。バランスを取ることだけを仕事と勘違いしてヴァージョンを追うごとにダメになっていたカルドセプトとは真逆な職人魂を感じられる。とにかく気持ちよくプレイでき、後に上げる1位や2位の重ゲームよりも万人受けするので、お勧め度としてはこのランキングでは1番かもしれない。

 

 

第3位 Tussie Mussie

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軽いゲームも1つは入れておきたいと思って、『翡翠の商人』と迷ったがこちらをランクイン。テーマの再現性ではこちらが圧倒的だし、本当に気軽にできてしっかりと楽しめる。花束を贈るという乙女チックなテーマの裏に、カード間のコンボや花束全体としての得点効率など、考える要素の種類が十分多い。たった18枚のカードで成り立っていることも驚きだ。

 

 

第2位 Heaven & Ale/ヘヴン&エール

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効率性と先取りのインタラクションの狭間でもだえ苦しむゲーム。後述の第1位が来るまではこれが今年のベストだと確信していた。理想の手順は簡単に見えているのに、周りのプレイヤーの思惑が確実にそれを許さない。自分のボードと共有ボードをにらめっこしながら一手一手に悩むことができる良いゲームだ。ただ、ビールを作るというテーマの再現性はほぼゼロなので、芳醇な世界観を重要視する人にはそこまでお勧めできないのではないかと思う。

 

 

第1位 Barrage/バラージ

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今年のベストは文句なしのこれ。システム的な面白さでは2位のHeaven&Aleもそん色なかったが、テーマの再現性では他のどんなゲームも軽々と凌駕し、リプレイ性でも匹敵するゲームはなかった。ゲームごとに重役と国家の組み合わせが変わることがリプレイ性を上げる一助になっているが、初心者向けの固定の推奨セットだけでも何度も遊んで色々と試してみたくなるほど、ゲームとしての土台がしっかりしている。今年のBestを越えたAll Time Best Gameと言っても差し支えない。

 

 

その他、次点など

◆Gentes

ランクインしてもおかしくないのだが、直後に来た名作の波に押し流されてまだ1回しかプレイしていないのでここで。「来年またやりたい」ことは確実だ。

◆Race to the New Found Land/ニューファンドランド

とにかくお手軽に本格的な拡大再生産&非対称能力スタートのゲームを体験できる。(強いか弱いかは別にして)イングランドだけが担当した全員が、あまり面白くないという感想なので惜しくもランク外。

オーディンの祝祭:拡張 ノース人

安定のオーディン。バランスが色々と改善され、確実により面白くなったと言える。ただし拡張なのでここで次点として。

◆Empyreal

ポテンシャルは十分ある2019年際終盤にきた期待の新作。まだ1回しかプレイしていないが、このゲームの本質は何回か遊んだところにあると思うので、2020年枠に回したいと思う。

◆バニーキングダム拡張:イン・ザ・スカイ

ゲームの新たな面白さや側面を引き出すという拡張の役割は全く果たしていなかったが、バニーキングダム自体がもう相当面白いので、拡張発売を機にまた遊ぶ機会ができたので特別枠。

 

最後に、今年もたくさん遊んでもらった仲間に感謝して今年最後の記事を終えたい。また来年もできるだけたくさんボードゲームが遊べますように。

Empyreal: Spells & Steam ファーストインプレッション

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Empyreal: Spells & Steam

BGG
https://boardgamegeek.com/boardgame/220367/empyreal-spells-steam

Kickstarter

https://www.kickstarter.com/projects/2022657250/empyreal-spells-and-steam/description

 

全国165人(=バッカー数)のLv99Games信者の方々お待たせしました。別に誰一人としてこの記事を待っていなかったとは思いますが、一人だけは、そう私だけはEmpyrealの記事を書ける日が来ることをずっと待っていたのです。

 

あれは約1年と半年前、和訳神様がArgent The Consortiumのルール和訳を公開してくれたことから始まる。それが罠だと気づいた時にはすでに米Amaで購入してしまっていて、その後、大量のカードの翻訳と日本語化に、実に3週間かかったのだった。ただ、今思えばピュアユーロではない、いわゆるアメリトラッシュ(※1)的なゲームに最初に出会ったのがArgent The Consortiumで良かったと思う。作り込まれた背景世界の魅力は、作り込まれたゲームシステムと同じくらいゲームそのものを面白くさせる要素なのだと改めて気づかせてくれたからだ。

 

(※1)ピュアユーロとアメリトラッシュ

システムを重視して背景世界を犠牲にしたのがピュアユーロ、背景世界を大事にしてシステムを犠牲にしたのがアメリトラッシュ、と一般的には言われている。ピュアユーロのゲームでは何を表現しているか分からないルールがある(このルールが必要なのは分かるけど、なぜサイコロの出た目の土地からしか収穫がないんだい?)一方で、アメリトラッシュには背景世界を表現するためだけのルールがゴテゴテと付けられている、ことが双方の対比的な特徴である。この区分はもともとピュアユーロの世界の方から発信された造語なので、「アメリトラッシュ」であることは否定的なものとして語られることが多い(何せ“ピュア”と“トラッシュ”、“清純”と“ゴミ”だ)。では一方で、アメリトラッシュの方からはピュアユーロをどう見ているのだろうか。これはアメリアナログゲーム界の巨人であるMTG(Magic;the Gathering)からの発信を見るのが手っ取り早いだろう。MTGではゲームが持つピュアユーロとアメリトラッシュという同じ側面を、主に受け取り手であるプレイヤーを分類することで表現している。詳しくはこちら 

MTGではゲームのシステム部分の美しさを重視するプレイヤーを「メルヴィン」、フレイバー(背景世界や雰囲気やストーリー)の美しさを重視するプレイヤーを「ヴォーソス」として分類している。メルヴィンが好むのがピュアユーロ、ヴォーソスが好むのがアメリトラッシュ系のゲームになる。MTGではどちらも等しく大事なことだとしているが、「どちらも同じくらい大事」である以上にMTGの捉え方ががユーロゲームと決定的に異なるのは、メルヴィンとヴォーソスの構成を足すと100%になるのではなく、最大200%になると考えていることである。どういうことか説明するために、MTGがプレイヤーを分類するためのもう1つの軸である「ティミー」「ジョニー」「スパイク」について見てよう。この3つはそのプレイヤーがゲームで何を成し遂げた時に最も満足感を得るか、逆に言うと何を目標にしてゲームを遊んでいるかの分類である。詳しくはこちら

ティミーは感動的な出来事を体験したくてゲームをするので、派手な効果のカードを好んで使う。ジョニーは自己を表現したくてゲームをするのでちょっと変わった個性的なカードを好む。スパイクは自分の技術を高めたり確かめたくてゲームをするので、選択肢が多くて自分の技術の良し悪しが反映されるカードを好む。ここで重要なことは、スパイクであることは少なからずティミーではないしジョニーでもない、ということだ。ゲームを遊ぶ目的傾向による分類なので、どれかに寄れば必ず残りの2つから離れる。もちろん誰しも少しずつ要素は混じっているが、スパイク的なカードを好んで使えば、必然ジョニー的なカードを使わない、ということになり、「ティミー」「ジョニー」「スパイク」がそれぞれ「10%」「20%」「70%」などということになる。カードの1枚1枚もそれぞれ、これはティミー向けの分かりやすい派手なカードで、ジョニーやスパイク向けではない、逆にこっちはジョニー向けだ、と定義され、カードもやはり1枚で見ると「10%」「20%」「70%」などとなって、だいたい相克が起こる。つまり、ジョニー向けに作られたゲームは本来ティミーにもスパイクにも売れないのだが、MTGは1セットごとに200枚以上のカードを作ることでそれを克服している。ジョニー向けのカードが60枚以上あるし、スパイク向けのカードも60枚以上あるので、ティミーもジョニーもスパイクも皆が買うのだ。

一方で、「メルヴィン」「ヴォーソス」は共存しうる、とMTGは考えている。それがプレイヤーなら「メルヴィン」「ヴォーソス」それぞれの部分を「90%」「90%」ずつ内包し、MTGが持つゲームシステムも背景世界も両方深く愛しているプレイヤーがいると考えているし、それがカードなら同じく「90%」「90%」で、システム的な美しさとフレーバーの美しさの両方を持ち、ほとんど全ての人に愛されるカードがあるとしている。逆に「10%」「10%」というプレイヤーも存在するし、「10%」「10%」というカードも存在しうる。そのようなプレイヤーはMTG自体に魅力を感じずさっさとをやめてしまうだろうし、それがカードなら、誰からも見向きもされず、大して売れずに商品としては失敗作となる。

さて、ここでメルヴィンを=システム重視=ピュアユーロ、ヴォーソスを=フレイバー重視=アメリトラッシュに戻して説明し直そう。ピュアユーロ側はアメリトラッシュであることを、ある種否定的にとらえていて、アメリトラッシュ成分を0%にして、ピュアユーロ成分100%の完璧な商品が良い商品である、とする傾向がある、気がする。しかしアメリトラッシュ側ではそれらは相克ではなく、両方100%で200%のものすごいゲームが作れるはずだと考えている、気がする(※それぞれ個人の感想です)。そしてユーロゲームとMTGの実際の販売実績、市場規模からみて、どちらの見方がどうなのか、あとはそれぞれの人の見方に預けるとしよう。

 

さて、注釈で大きく脱線してしまったが、これはMTGではなくてEmpyrealの記事であることを思い出した。注釈を読み飛ばさずに読んでしまった奇特な方にはすでに私が何を言いたいか分かってしまっていると思うが、つまりEmpyrealはArgent The Consortiumと同様にすごいゲームだということだ。システム部分はピュアユーロにも氾濫していそうな線路敷設の陣取りで構成されているが、そこにこれでもか、これでもか!というくらいの個別の列車能力とキャラクター能力とプレイヤーごとに異なる初期能力が乗っかってくる。ユーロゲームだと、プレイヤーごとの違いはある意味目立たせてあって、それを1つのゲームの売りにしていたりする。なので隣の芝生が青いのがすごく気になることが多く、それがまた面白かったりする。翻ってEmpyrealは、文字通り何もかも違うので、隣の芝生が青いことがあまり気にならない。青いことは青いのだが、それよりも次に出てくる魔法列車の個別の能力や、次に引くであろう技術者のユニーク能力の方が気になって仕方がない。そしてこれは相克ではないのだ。すべての技術者のユニーク能力や魔法列車の構成を把握したら、その時にはきっと隣のプレイヤーの芝生がくっきりとはっきりと青々と茂っていることだろう。

このようにEmpyrealはピュアユーロ的な楽しみも十分ある。この企業の場合はどう動くのが良いだろうかと後になって考えたり、ゲーム中も効率的な最善手を探そうとしたりできる。実際に後輩Mは主にこのような楽しみ方をしていそうだ。ただ、そうではなく、ではなく、それに加えて、Empyrealには、次と次と登場する個性溢れる魔法列車やキャラクター能力に溺れるという楽しみ方もあるし、システムではない純粋な背景世界の魅力を感じながらプレイする楽しみ方もある。

背景世界の設定はルールブックにあるのだが、この背景世界はぜひ何か別の表現、小説とか漫画とかで出してほしいと思う。

今回のゲームで起こった展開は、2度と再現されないだろう。それはゲームシステムを1度経験して、次回はより洗練されたゲームの選択ができるであろう部分もあるし、登場するすべてが個性的過ぎて、次回はどんな展開になるのか予想もできずにワクワクする部分の両方がある。これは何度でも、何十回でも遊んでみたいと思うゲームだ。

 

Argent The ConsortiumでLv99Gamesを知ったと同時にそれについて調べたら、ちょうどEmpyrealの出資が終わっていて非常に無念に思ったものである。ただ、そこから奇跡が起こってAsobition様がよりによって日本語版を出してくれることになるとは思いもしなかった。ゲーム外での背景ストーリーも感慨深いものがあって、個人的な思い入れが高まっていることもあるかもしれない。

 

Plague Inc. The Board Game/伝染病株式会社ボードゲーム ファーストインプレッション

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Plague Inc. The Board Game/伝染病株式会社ボードゲーム

この箱からして禍々しさはある意味凄い。


BGG

https://boardgamegeek.com/boardgame/195162/plague-inc-board-game

Kickstarer

https://www.kickstarter.com/projects/ndemic/plague-inc-armageddon-expansion

 

面白いという評判を聞いていたところ、ちょうどKickstarerで拡張セットArmageddon の出資募集が始まったので、基本ゲームと一緒にバックしてみた。この拡張セットで5人プレイが可能になったのが一番大きい。我が家には、プレイしたいけど4人までがネックで稼働しないゲームが結構あるのだ。(Barrageの5人用拡張が待ち遠しい)

カードが中心のゲームだが、TraitカードとCountryカードに言語異存はほぼほぼなく、日本語化が必要なのはEventカードだけだ。それも、今回は日本語化が間に合わなかったので、引いたカードは公開でその都度翻訳して対応したが、十数枚くらいしか使わなかったので大した問題もなくプレイできた。問題だったのはカードの特殊な大きさで、スリーブに入れられないことだ。(カードの保護以上に、シャッフルの手間が大きく軽減されるので、基本は全部スリーブに入れる派)

 

システム的には素直なエンジンビルド+素直な陣取りなのだが、病原菌になって世界を滅ぼすというテーマとこれ以上ないくらいマッチしている。自分が担当する病原菌をTrait(特性)カードで強化していき、単純に感染力や致死性をパワーアップさせたり、空港を介して世界に広がれるようにしたり、酷暑に耐性を持たせて暑い国にも感染できるように進化させる。

手番でやることは単純で、望むならTraitカードで強化して、自分の感染力に等しいトークンをボードに置いて、条件が整えば国を滅ぼす判定のダイスを振るだけだ。それだけなのだが、病原菌の特性と陣取りの際のトークンを置く制限とが親和して、確かに世界に感染していく病原菌の世界が感じられる。

手札に来るTraitカードがランダムなので、各プレイヤーごとに感染力が高かったり、致死性が高かったり、大陸を越えて広がりやすくなったりと、それぞれ個性的な特徴を持って進化していくのも面白い(大仏さん担当の菌のように、手札が悪くて全く進化できなかったりなどもだ!ただし、これはさっさと手札を入れ替えれば済んでいたはずだ。なぜそうしなかったかは大仏さんのみぞ知るところなので、運ゲーで1人沈んでいくようなことはないと思う)。逆に言えば思った通りの進化はほぼほぼできない。ただ、それが良いところだとも思う。盤面には暑い国ばかりが並んでいるのに、酷暑耐性を獲得できずに感染拡大がままならずもじもじする病原菌たち、というのは実際プレイしていて面白かった。

後で確認したら終了条件のルールを間違えていて、本当ならもう少しゲームが続いていたはずだが、インスト込みの5人プレイで90分だったというのはすごい。何がすごいかって60分プレイ表記のゲームがきちんとそのくらいの時間で終わるというのがすごい。何を言っているのか分からないかもしれないしが、60分で終わるゲームが60分で終わるのはすごいことなのだ!このファーストプレイでは数人がTraitカードで個人ボードを埋め切ったあたりで終了したので、それがもう少し続くなら、進化しきった病原菌がもう少しだけ世界で暴れまわるのを見られるので、今度はきちんとルールを間違わずにプレイしたいと思う。